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入り口には警察官と、そしてロスからやってきた父さんがいた。その人が本物の父さんのことだったのか、それともやはり偽物なのか、そんなことはどうでもよかった。父さんは慣れない手つきで、少年を強くしっかりと抱きしめた。少年は面映い気持ちになったが、何も言わずに身を任せた。この人もこの人なりに、必死に生きてるんだということが伝わってきた。

「今日はこのホテルに泊まろう。母さんには僕が連絡しておく」
「ごめんなさい」と少年は言った。
父さんは驚いた顔をしていた。それからにっこりと笑い、「痛たたたた」と右足を押さえた。少年はその姿がおかしくてつられて笑った。

部屋のベッドはふかふかで、少年は晩ご飯も食べずに寝てしまった。深海をさまようような眠りだった。目を覚ますと、体中がきしんだ。しかし頭と体がひとつになっている充足した気分に満たされていた。今までにないすがすがしい感覚だ。もう僕は完全に治ったのだろうか。昔のことを思い出せるのだろうか。しかしそれを試すのはもう少しあとだ。部屋を見渡す。バスルームからシャワーの音が聞こえる。父さんの脱ぎ散らかした服が床に落ちている。それと義足も。最初それを本物の足だと勘違いした。おそるおそる手に取ってみると、とても軽いものだった。サビ男の体が軽かったのを思い出す。それからサビ男の右足も悪かったのを思い出し、もしかしたらサビ男の右足も義足だったのかもしれないと思った。
それから少年は、机の引き出しを開け、ホテルの便せんを見つけた。リュックから鱒のかたちをしたペーパーウェイトを探り出し、それを重石にして手紙を書いた。
サビ男へ、という書き出しだ。少年は、今自分に使える言葉だけを使って一字一字丁寧に書いた。まるで絵を描くような気持ちで書いた。ひとつひとつの文字がどこか遠いところの、たとえば宇宙のような場所と繋がって、そこから発せられる暗号を解読するように丁寧に文字を連ねていった。できあがると、何度か読み返し、折り畳んだ。それから次は、お母さんお父さんへ、という書き出しで、もう一枚書いた。それもできあがると両親への手紙はベッドの上に置き、サビ男への手紙だけポケットにいれ、こっそりと部屋を抜け出した。


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